ポーランド
クラクフ
毎正時、途切れるラッパの音
王宮の丘とユダヤ人地区が隣り合う街
クラクフ(Kraków)は、ヴィスワ川(Wisła)のほとりのヴァヴェル(Wawel)の丘から、ポーランド王が国を治めた街です。17世紀に王の居所がワルシャワへ移った後も、戴冠式と王の葬儀は長くヴァヴェル大聖堂で行われました。1257年に区画された広場がいまも街の真ん中にあり、旧市街は1978年にユネスコが初めて選んだ世界遺産12件のひとつ。旧市街の南のカジミエシュと川向こうのポドグジェにはユダヤ人社会とゲットーの痕跡が残り、王の都と戦争の記憶のあいだを歩いて行き来できます。
中央市場広場 ― 毎正時に途切れるラッパ
中央市場広場(Rynek Główny)は一辺が200mを少し超える正方形で、中世ヨーロッパ最大の広場でした。中央に長く延びるかつての織物取引所、織物会館(Sukiennice)の上階は、クラクフ国立博物館の「19世紀ポーランド美術ギャラリー」です。 広場の角に立つ聖マリア教会(Kościół Mariacki)では、毎正時、高さ81mの塔からラッパ手がヘイナウ(hejnał)を東西南北へ一度ずつ吹きます。曲はいつも同じところでぷつりと途切れます。タタール軍の襲来を知らせた見張りが、喉に矢を受けた箇所だという伝説があるからです。堂内のファイト・シュトース(Wit Stwosz)の祭壇は1477〜1489年に制作された高さ13mの作品で、平日と土曜は11時50分に扉が開きます。 12月の第1木曜には、アダム・ミツキェヴィチ(Adam Mickiewicz)像の下に、キリスト降誕の模型「ショプカ(szopka)」を手にした人たちが集まり、正午のラッパが鳴ると行列が広場をひと回りします。
ヴァヴェルの丘 ― 王宮と大聖堂、竜の洞窟
旧市街の南端、ヴィスワ川を見下ろす石灰岩の丘に、王宮と大聖堂が並んで建っています。王宮はもともと中世の城で、16世紀に宮殿のような住まいへと姿を変えました。大聖堂は戴冠式と王の葬儀が行われた場所。鐘楼のジグムントの鐘(Dzwon Zygmunt)は1520年につくられた鐘で、鳴らすには鐘つき12人が必要です。鳴るのは復活祭や11月11日の独立記念日など、決まった日だけです。 丘を下りるときは竜の洞窟(Smocza Jama)を抜けてみてください。伝説の竜が棲んでいたという81mの洞窟の道を抜けるとヴィスワ川の河岸に出て、出口の前に竜の像が立っています。洞窟の公開は4月下旬から10月末までです。
カジミエシュとポドグジェ ― 記憶の残る街区
カジミエシュ(Kazimierz)は、かつてクラクフとは別の町で、ユダヤ人の暮らしの場でした。16世紀の墓地と7つのシナゴーグが残り、旧シナゴーグ(Stara Synagoga)はクラクフのユダヤ人の歴史と文化を伝える博物館になっています。 川を渡るとポドグジェ(Podgórze)。戦前のクラクフには6万4000人を超えるユダヤ人が暮らし、1941年3月、占領当局はこの地区にゲットーをつくるよう命じました。ゲットーは1943年3月13〜14日に最終的に解体されます。ゲットー英雄広場(Plac Bohaterów Getta)に並ぶ椅子のオブジェは、人の消えたゲットーを思い起こさせます。リポヴァ通り4番地(ul. Lipowa 4)のオスカー・シンドラーのエナメル工場では、常設展「ナチス占領下のクラクフ 1939〜1945」が見られます。
クラクフの食卓 ― 屋台のパンから夜のザピエカンカまで
広場のあちこちの屋台で売られるオブヴァジャネク(obwarzanek)は、2〜3本の生地をねじって輪にして焼いたパンで、ケシの実や塩、ゴマがのっています。パン職人が広場でパンを売る権利は1257年の都市建設の文書にすでに記され、オブヴァジャネクは2006年にポーランドの伝統食品リストに登録されました。 レストランでは、ジャガイモやチーズ、肉など具がさまざまなピエロギ(pierogi)を何種類か取り合わせて。ジュレック(żurek)はライ麦を発酵させた酸味のあるスープです。夜はカジミエシュのノヴィ広場(Plac Nowy)の屋台でザピエカンカ(zapiekanka)を。縦に割ったバゲットにマッシュルームとチーズをのせて焼いた屋台料理です。
近郊へ1日ずつ ― ヴィエリチカとオシフィエンチム
ヴィエリチカ岩塩坑(Kopalnia Soli Wieliczka)は市中心部から南東へ10km。中央駅から列車でヴィエリチカ・リネク・コパルニャ(Wieliczka Rynek Kopalnia)駅まで行き、少し歩けば着きます。観光ルートは3.5km、最深部は地下135mで、階段は800段を超えます。地下は17〜18℃なので、夏でも薄手の上着があると安心です。塩水の湖や地下の広間を抜けると、聖キンガ礼拝堂(Kaplica św. Kingi)に出ます。 西のオシフィエンチム(Oświęcim)にあるアウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館は、アウシュヴィッツIとアウシュヴィッツII=ビルケナウにそれぞれ最低約90分をかけるよう案内しており、ガイドツアーは約3時間30分。岩塩坑と同じ日には組まず、まる1日を空けておきましょう。
旧市街の外へ ― プランティ、大学、ノヴァ・フタ
旧市街を囲むプランティ(Planty)公園は、崩れかけていた中世の城壁と堀の跡に19世紀初めにつくられた、長さ約4kmの緑地です。城壁で残ったのは一部の区間とフロリアンスカ門(Brama Floriańska)、バルバカン(Barbakan)。コレギウム・マイウス(Collegium Maius)は1364年創設のヤギェウォ大学の建物で、ポーランド最古の大学建築です。コペルニクスも1491〜1495年にこの大学で学びました。 東のノヴァ・フタ(Nowa Huta)は、1949年に最初の建物の基礎工事が始まった計画都市で、巨大な製鉄所とともに生まれました。「内容は社会主義、形式は民族的」という原則のもとルネサンス様式で建てられ、ギリシャのアゴラを手本にした中央広場(Plac Centralny)から5本の大通りが放射状に延びています。
おすすめ3泊4日プラン
Day 1 ― 空港から列車で中央駅まで約20分 → プランティ沿いに旧市街へ → 中央市場広場・織物会館 → 夕食はカジミエシュで Day 2 ― 聖マリア教会の祭壇開扉(11時50分)→ ヴァヴェル城・大聖堂 → 竜の洞窟を下りてヴィスワ河岸へ → ポドグジェ・シンドラーの工場 Day 3 ― オシフィエンチムのアウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館 Day 4 ― ヴィエリチカ岩塩坑 → 午後はノヴァ・フタへ
- おすすめの季節
- 5〜6月、9〜10月(街歩きに快適)、12月(クリスマスシーズン)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- ピエロギ(ジャガイモ・チーズ・肉入りの餃子)
- オブヴァジャネク(ねじって焼いた輪形パン)
- ザピエカンカ(ノヴィ広場のオープンバゲット)
- ジュレック(ライ麦発酵スープ)
実用的なヒント
- アウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館は入場無料ですが、visit.auschwitz.org で入場券の事前予約が必要です。入口では発行されず、35×25×15cmを超えるバッグは持ち込めません。
- ヴァヴェル城の展示は1日の入場者数に上限があり、チケットに記載の入場時刻を守る必要があります。オンライン販売は1か月前から。大聖堂・王墓・ジグムントの鐘は城とは別にチケットが必要です。
- シンドラーの工場は販売枚数が限られ、訪問日の90日前からオンラインで販売されます。無料の月曜日は事前予約ができません。
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