中国
広州
ひと壺のお茶で始まる広州の朝
旧商人街の路地と珠江の夜景
広州では、多くの人が茶楼で一日を始めます。朝早くから丸テーブルごとに茶壺と蒸籠が並び、新聞を広げる年配の常連と子ども連れの家族が同じフロアに入り交じって座ります。この街は18世紀半ばからアヘン戦争のころまで、ヨーロッパの商船が交易できる中国で唯一の港でした。旧商人街には騎楼のアーケードと清朝末期の一族の祠堂があり、珠江の南岸では、くびれた姿の広州塔に毎晩明かりがともります。「食は広州に在り(食在広州)」という古い言葉が、今もそのまま通じる街です。
朝は飲茶から
広東語の「飲茶(ヤムチャ)」はお茶を飲むという意味ですが、実際にはお茶を片手に点心を何皿か分け合う食事のこと。基本はお茶ひと壺に点心ふた品の「一盅両件」で、朝の飲茶はたいてい早朝から午前11時ごろまで続きます。 席に着いたら茶葉を選び、注文票に点心を書き込みます。海老が透けて見えるハーガウ(蝦餃)、豚肉がぎっしり詰まったシュウマイ(焼売)、薄い米粉の皮を巻いて醤油をかけた腸粉(チョンファン)があれば、最初の一巡には十分です。お茶を注いでもらったら人差し指と中指でテーブルを軽くたたいてお礼を伝え、ポットが空になったらふたを斜めにずらしておくと、店の人がお湯を足してくれます。 2026年5月1日からは、飲茶文化を守る広州市の条例が施行されています。飲茶だけを扱う中国初の法律で、店内での伝統的な製法の基準を定め、作り方をはっきり示すよう求めています。 昼は、ロースト店のガラス越しに吊るされたローストグースやチャーシューを切ってのせたご飯か、弾力のある海老ワンタンの下に細い卵麺が隠れたワンタン麺を一杯。涼しくなると、土鍋で炊いて底のおこげまでこそげて食べる煲仔飯(ボウジャイファン)を求める人が増えます。
西関、商人たちの古い街
中心部の西側、荔湾一帯は、昔から「西関」と呼ばれてきた商人の街です。1757年から1842年まで、中国でヨーロッパとの交易が合法的に認められていたのは近くの珠江沿いにあった「十三行」だけで、茶や絹、磁器がここから船に積み込まれていきました。 上下九の歩行者天国と恩寧路には、2階から上が歩道の上に張り出し、柱で支えられた騎楼の建物が長く続き、にわか雨が降ってもアーケードの下を歩いていけます。恩寧路の隣の永慶坊は、西関の古い住宅を改修して茶館や工房が入った路地。近くの店では、魚の身やピーナッツ、揚げパンのかけらをのせた艇仔粥を売っています。かつて川の小舟で売られていた粥なので、「小舟(艇仔)」の名が付きました。
陳家祠、屋根の上の小さな舞台
陳家祠は、広東各地の陳氏一族が資金を出し合い、1893年に完成させた合族祠です。科挙を受けに省都へ出てきた一族の子弟が滞在する書院でもあったため、英語では「Chen Clan Academy」とも呼ばれます。 石・木・れんがの彫刻と、陶器や漆喰でかたどった装飾を合わせて「三雕両塑」といい、門から屋根の端まで余白がほとんどありません。いちばん高い棟には隣の仏山市・石湾で焼かれた陶製の飾りがのり、題材の多くは粤劇(広東地方の劇)の物語や花、縁起のよい文様です。中庭から見上げると、屋根の上に小さな舞台が並んでいるようです。 1959年からは広東民間工芸博物館(当時は工芸館)がここに置かれ、奥の展示室では地域の工芸品も見られます。
沙面島、川辺の租界通り
陳家祠から南へ下って珠江に出ると、沙面島です。名前は「砂の表面」という意味で、宋代から交易の要地でした。1859年に土地の5分の4がイギリス、5分の1がフランスの租界となり、ゴシック・バロック・新古典主義の様式が混じり合う40棟を超える建物は、広州でも指折りの異国情緒ある風景です。 島内の道はほとんどが歩行者のもので、街の真ん中なのに静かです。大きな並木の木陰に旧租界の建物が続き、川沿いのベンチに座ると、行き交う船をつい長く眺めてしまいます。午後遅くに島をひと回りし、水辺で夕日を見てから夜の珠江へ向かってみてください。
越秀公園と南越王の墓
広州の別名「羊城」は、穀物の穂をくわえた羊に乗って舞い降りた五人の仙人が人々に穂を分け与えて去り、残った羊が石になったという伝説から生まれました。越秀公園の丘にはこの伝説を表した高さ11mの五羊石像があり、その近くには明代の1380年に最初に建てられた楼閣、鎮海楼が立っています。 公園から遠くない南越王博物院(西漢南越王博物院)には、1983年に見つかった南越国第2代の王・趙眜の墓がその場で保存されていて、石で築かれた墓室の中まで下りることができます。展示の中心は、2,291枚の玉片を絹糸で縫い合わせた長さ1.73mの玉衣(糸縷玉衣)。その前に立つと、紀元前2世紀にこの地がすでに一つの王国の都だったことが実感できます。
珠江の夜
日が沈むと、珠江南岸の広州塔に明かりがともります。高さ450mの塔体に150mのアンテナをのせた全高600mの塔で、中ほどがくびれていることから、地元では「小蛮腰(細い腰)」と呼ばれています。塔の頂上の周りには、玉のような形のゴンドラがレールに沿ってゆっくり回る観覧車もあります。 塔を正面から眺めるなら、川向こうの珠江新城にある花城広場へ。高層ビルの間に長く延びる広場の端に立つと、川の向こうに塔の全身が見渡せます。珠江クルーズに乗れば、橋の下をくぐるたびに両岸の明かりが水面に長くにじむ様子も見られます。
おすすめ3泊4日モデルコース
Day 1 — 広州白雲国際空港に到着 → 越秀公園・鎮海楼 → 南越王博物院 → 花城広場から広州塔の夜景 Day 2 — 朝の飲茶 → 陳家祠 → 上下九・恩寧路・永慶坊の路地 → 夕暮れの沙面島散策 → 珠江クルーズ Day 3 — 市の北にある白雲山で午前の散策 → 午後は広州塔の展望台 → 夜は煲仔飯 Day 4 — 最後の飲茶 → 空港
- おすすめの季節
- 10〜12月(涼しく乾燥)、3〜4月(春)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- 点心(ハーガウ・シュウマイ・腸粉)
- ローストグースとチャーシュー(広東式ロースト)
- ワンタン麺(海老ワンタン・細い卵麺)
- 煲仔飯(土鍋で炊いたご飯)
実用的なヒント
- AlipayやWeChat Payに海外のクレジットカード(Visa・Mastercardなど)を登録しておくと、飲食店や店舗での支払いがスムーズです。カードの名義とアプリの登録名が一致している必要があり、地下鉄の改札もQRコード決済に対応しています。
- 広州交易会(中国輸出入商品交易会)は例年4月中旬〜5月初旬と10月中旬〜11月初旬に開かれます(2026年秋は10月15日〜11月4日)。この時期は市内のホテルが埋まりやすいので、日程が重なる場合は先に宿を押さえておきましょう。
- 陳家祠は毎月最終月曜日が休館で、開館時間は季節によって異なります。月曜日に訪れる場合は、その日が月の最終月曜日かどうか先に確かめておくと安心です。
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