ドイツ
フランクフルト
高層ビルの陰に残る戴冠式の道
日が暮れたら川向こうのアップルワイン酒場へ
フランクフルトは、飛行機の乗り継ぎで空港を通り過ぎるだけの街として記憶されがちです。けれど市内に入り、ガラス張りのビル街から少し歩けば、王や皇帝が戴冠式へ向かった道に出ます。大聖堂と市庁舎のあいだの路地は2018年に建て直され、ゲーテの生家も戦後、元の構造どおりに復元されました。川の南岸には古い邸宅を改装した博物館が続き、日が暮れればアップルワインの酒場で見知らぬ人と同じテーブルにつくことも。失ったものを建て直してきた街だから、新しい建物と再建された建物が同じ一角に並んでいます。
戴冠式の道をたどる
フランクフルト大聖堂は一度も司教座聖堂になったことがないのに、「皇帝の大聖堂(カイザードーム)」と呼ばれています。1356年からドイツ国王の選挙が、1562年からは神聖ローマ皇帝の戴冠式がここで行われたためです。急な塔の階段328段を上れば、街が一望できます。 1405年からいまも市庁舎として使われているレーマー(Römer)と大聖堂のあいだは、王や皇帝が戴冠式へ向かって歩いた「戴冠式の道」。沿道のノイエ・アルトシュタット(新しい旧市街)は2018年に完成した地区で、35軒のうち15軒は昔の姿を忠実に再現した建物、20軒は新築です。路地の奥には、1844年に『もじゃもじゃペーター』を書いた医師ハインリヒ・ホフマンの博物館もあります。 1904年に高さ70mで完成した市庁舎の塔「ランガー・フランツ(Langer Franz)」は、1944年3月の空襲で先端を失い、1950年代の再建では費用の都合で仮屋根だけがのせられ、45mに低くなりました。いまは昔の先端を取り戻す工事の最中で、2027年の完了を予定しています。
ゲーテの家とパウロ教会
ゲーテハウス(Goethe-Haus)は、ゲーテが1749年8月28日の正午に生まれ、育った家。『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』や『若きウェルテルの悩み』を書いたのもこの家です。第二次世界大戦で全壊しましたが、1951年までに元の構造どおりに再建され、人形劇の舞台が置かれた部屋から書斎、台所まで、18世紀の家具でしつらえられています。木曜は21時まで開館。 パウロ教会(Paulskirche)は、1848年5月18日にドイツ初の国民議会が開かれた場所です。ドイツ書籍協会平和賞の授賞式もこの教会で行われます(2026年は10月11日)。
南岸の博物館通り
マイン川南岸の河岸通りシャウマインカイ(Schaumainkai)には、広い庭を持つ古い邸宅が並んでいました。1978年に副市長ヒルマー・ホフマンがこの一帯を文化地区としてまとめる構想を打ち出し、1984年には邸宅2棟がドイツ建築博物館とドイツ映画博物館に生まれ変わります。これが「ムゼウムスウーファー(博物館河岸)」の始まりです。 その中心がシュテーデル美術館(Städel Museum)。1815年に銀行家で商人のヨハン・フリードリヒ・シュテーデルが市民財団として創設した美術館で、ドイツ最古の博物館財団とされています。クラーナハやデューラー、ボッティチェリ、レンブラント、フェルメールまで、700年を超える美術史をたどれます。火曜の15〜18時は10ユーロで入館可能。毎月最終土曜は多くの博物館が入館無料です(8月の市立博物館はその前の土曜)。
ベンベルとひし形模様のグラス
「エッベルヴォイ(Ebbelwoi)」とも呼ばれるアップルワイン(Apfelwein)は、ヘッセン地方の炻器の壺ベンベル(Bembel)に入って出てきます。注文は1リットルか5リットルのベンベルで。かつてベンベル1つは、ちょうど8ショッペン(Schoppen)を入れる単位でした。グラスはひし形模様の入ったゲリプテ(Gerippte)で、0.25・0.3・0.5リットルの3種類。アルコールが気になるなら、水で割った「ゲシュプリッツター(Gespritzter)」を頼みましょう。 こうしたアップルワインの酒場は、川向こうのザクセンハウゼン(Sachsenhausen)に多く集まっています。つまみにはハントケーゼ・ミット・ムズィーク(Handkäs mit Musik)を。小さく丸いサワーミルクチーズをオリーブオイルと玉ねぎ、キャラウェイでマリネしたもので、名前の「音楽」は生の玉ねぎのことです。
市場で味わうフランクフルト
クラインマルクトハレ(Kleinmarkthalle)は1954年に開業した屋内市場で、60を超える店が入っています。平日は18時、土曜は16時に閉まり、日曜は休み。ここではフランクフルター・ヴュルストヒェン(Frankfurter Würstchen)を味わいましょう。1929年の決議で原産地が守られ、フランクフルトとその周辺で作られたものだけが本物とされています。 グリューネ・ゾーセ(Grüne Soße)は、チャイブ、パセリ、チャービル、ボリジ、ソレル、サラダバーネット、クレスの7種のハーブで作る冷たいソース。ゆで卵や皮付きのまま加熱したじゃがいもに添えて食べます。デザートなら、1735年から続くケーキ、フランクフルター・クランツ(Frankfurter Kranz)と、マジパン菓子のベトメンヒェン(Bethmännchen)を。ベトメンヒェンにのるアーモンドの半割りはいまは3つですが、もともとは銀行家ベートマン家の4人の息子を表して4つでした。
マイン川の夜
マインタワー(Main Tower)は56階建てで、屋上の展望台は通りから約200mの高さにあります。大人の入場料は9ユーロ。夏季の金・土曜は23時まで開いているので、日没後にビルの明かりがともるのを眺める時間もたっぷり。最後のエレベーターは閉館45分前です。 クリスマスマーケットの時期には、レーマー広場やマインカイ、パウル広場など6か所に230を超える屋台が並びます(2026年は11月23日〜12月22日)。熱いアップルワインを片手に、干しプラムとナッツを針金でつないだクヴェッチェメンヒェン(Quetschemännchen)をおみやげに選んでみてください。
おすすめ2泊3日プラン
Day 1 — 空港到着 → レーマー広場・大聖堂の塔 → ノイエ・アルトシュタットの路地 → マインタワーの夜景 Day 2 — ゲーテハウス → パウロ教会 → クラインマルクトハレでランチ → アイゼルナー・シュテーク(Eiserner Steg)を渡ってシュテーデル美術館へ → ザクセンハウゼンのアップルワイン酒場で夕食 Day 3 — 博物館河岸を散策(建築・映画博物館) → ツァイル通りでショッピング → 空港
- おすすめの季節
- 5〜9月(日が長く川辺の散歩に)、11月下旬〜12月(クリスマスマーケット)
- おすすめの日数
- 2〜3日
食べたいもの
- アップルワイン「エッベルヴォイ」(ザクセンハウゼンの酒場で)
- グリューネ・ゾーセ(7種のハーブのソース)
- ハントケーゼ・ミット・ムズィーク(玉ねぎでマリネしたチーズ)
- フランクフルター・ヴュルストヒェン(クラインマルクトハレで)
実用的なヒント
- 空港のSバーン駅(S8・S9)はターミナル1の地下です。市内用の1日乗車券(7.75ユーロ)では空港区間に乗れないため、空港〜市内は片道券(6.90ユーロ)か、空港まで使えるフランクフルトカード1日券(13ユーロ)を選びましょう。
- ムゼウムスウーファー・チケット(MuseumsuferTicket)は21ユーロで、39館に連続2日間入れます。シュテーデル美術館だけで19ユーロなので、2館以上回るならこちらがお得です。
- アップルワインの観光路面電車エッベルヴァイ・エクスプレス(Ebbelwei-Express)は土・日曜と祝日に運行。ただし聖金曜日、聖体の祝日、11月の追悼の日曜2回(国民哀悼日・死者の日曜日)は運休です。約1時間の周遊で8ユーロ(現金のみ)、アップルワイン・リンゴジュース・ミネラルウォーターから1本とプレッツェル1袋が料金に含まれます。
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