イギリス
エディンバラ
岩の上の城と、谷の向こうの新市街
午後1時、城から大砲が響く街
列車でエディンバラに着くと、まず谷の底で降りることになります。ウェイヴァリー駅(Edinburgh Waverley)が旧市街と新市街のあいだのくぼ地にあるからです。階段を上って外に出ると、片側の丘には黒い岩の上の城と中世の路地、向かいには整然とした碁盤目の街並み。数百年の差をおいて造られた二つの町が、庭園ひとつを挟んで向き合っています。そして日曜以外のほぼ毎日、午後1時ちょうどに城から大砲が一発鳴り響きます。このガイドは、その音が届く範囲の物語です。
谷を挟んだ二つの町
旧市街(Old Town)は、城の建つ岩から東へ下っていく尾根の上にあります。一本の大通りから細い路地が左右にびっしりと枝分かれし、地図で見ると魚の骨のような形。こうした路地はクロース(close)と呼ばれます。 新市街(New Town)はその正反対。1767年の設計コンペでジェームズ・クレイグ(James Craig)の案が選ばれて建設が始まり、1890年までに広い大通りや広場、ジョージアン様式のテラスハウスが建ち並びました。 二つの町は1995年にそろってユネスコ世界遺産に登録されています。そのあいだの谷にあるプリンシズ・ストリート・ガーデンズ(Princes Street Gardens)のベンチに座れば、振り向くだけで両側の景色を見比べられます。
ロイヤル・マイル、城から宮殿へ
ロイヤル・マイル(Royal Mile)は、エディンバラ城(Edinburgh Castle)とホリールード宮殿(Palace of Holyroodhouse)という二つの王家の住まいを結ぶ下り坂。長さは昔のスコットランドの単位で1マイルです。 城壁の内側にあるセント・マーガレット礼拝堂(St Margaret's Chapel)は、1093年にこの城で亡くなったマーガレット王妃をしのんで息子のデイヴィッド1世が建てたもので、エディンバラ最古の建物。クラウン・ルームの王冠・王笏・国剣(Honours of Scotland)は、英国で最も古い王家の宝器です。 坂の両側に並ぶクロースの入口をくぐると、暗い通路の先に小さな中庭が現れることも。通りの下には17世紀の街路が残っていて、リアル・メアリー・キングズ・クロース(The Real Mary King's Close)のツアーで歩けます。
午後1時の大砲とタイムボール
城では日曜・聖金曜日・クリスマスを除く毎日、午後1時に大砲を一発撃ちます。1861年に始まったワン・オクロック・ガン(One O'Clock Gun)で、かつてはフォース湾(Firth of Forth)の船がこの音を聞いて航海用の時計を合わせていました。 この瞬間を見るなら、新市街の東端にあるカールトン・ヒル(Calton Hill)へ。ネルソン記念塔(Nelson Monument)のてっぺんにある大きなタイムボールを、大砲の発射に合わせて下ろすのです。音は光より遅いので、球が下りるのを先に見て、数秒後にドンという音を聞くことになります。 夕暮れには、柱だけが並ぶ国立記念碑(National Monument)のそばに立ってみてください。西に城と旧市街の屋根の連なり、北にフォース湾の海が見えます。
街の真ん中の古い火山
ホリールード宮殿の裏、ホリールード公園(Holyrood Park)にそびえるのがアーサーズ・シート(Arthur's Seat)。約3億4000万年前に噴火した火山の名残で、市街側の崖ソールズベリー・クラッグス(Salisbury Crags)は、18世紀の地質学者ジェームズ・ハットン(James Hutton)が岩石を観察した場所です。 定番の散策コースは5.5km、1時間半ほど。山頂付近は岩がむき出しで滑りやすく、風も強いので、グリップの効く靴が安心です。頂上に立つと、城の建つ岩から東へ下っていく旧市街の尾根がひと目で見渡せます。ロイヤル・マイルは、まさにその背に沿って延びる道です。
水辺をたどって、ディーン・ビレッジからリースへ
新市街の北には、ウォーター・オブ・リース(Water of Leith)という小さな川が流れています。20km以上ある川沿いの遊歩道のうち、短く歩くならストックブリッジ(Stockbridge)からディーン・ビレッジ(Dean Village)まで。大通りから少し下りただけで、水音と古い石造りの家、小さな橋が現れます。ストックブリッジでは毎週マーケットも開かれます。 川が海に出るところが港町リース(Leith)。14世紀から港だったこの町には、今ではミシュランの星付きレストランと屋台風の店が並んでいます。オーシャン・ターミナル(Ocean Terminal)の横には、1953年から1997年まで世界を巡った王室ヨット、ブリタニア(Royal Yacht Britannia)が恒久係留され、船内を見学できます。市内からはトラム一本で行けます。
スコットランドの食卓
スコットランドの国民食ハギス(haggis)は、肉とオートミール、玉ねぎ、塩、スパイスで作る料理。ふつうはニープス(カブ)とタティーズ(じゃがいも)のマッシュが添えられます。昔は羊の胃袋に詰めて煮ていたと聞くと身構えてしまいますが、食べてみるとコショウの効いた香ばしいひき肉に近い味わいです。風の冷たい日には、燻製ハドックとじゃがいも、玉ねぎで作るクリームスープ、カレン・スキンク(Cullen skink)がよく合います。 デザートには、ラズベリーと焼いたオート麦、はちみつ、ウイスキー風味のクリームを重ねたクラナカン(cranachan)を。フィッシュ・アンド・チップスの店で聞かれる「ソルト・アンド・ソース?」は、塩と、酢でのばした茶色のソースをかけるかという意味です。
8月のフリンジ、年末のホグマニー
8月になると、街のあちこちが舞台になります。1947年、エディンバラ国際フェスティバル(Edinburgh International Festival)に招かれていない8つの劇団がやって来て公演したのが、フリンジ(Edinburgh Festival Fringe)の始まり。80回目となる2027年のフリンジは8月6日〜30日、城で行われる軍楽公演ロイヤル・エディンバラ・ミリタリー・タトゥー(Royal Edinburgh Military Tattoo)は8月6日〜28日です。 新年を迎える祭りホグマニー(Hogmanay)は、2026年12月29日から2027年1月1日まで。29日夜のたいまつ行列に始まり、31日夜のストリートパーティーやコンサート、真夜中の花火へと続きます。
- おすすめの季節
- 5〜9月(日が長い・8月の祭り)、12月(クリスマス・ホグマニー)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- ハギス(ニープス・アンド・タティーズ添え)
- カレン・スキンク(燻製ハドックのスープ)
- フィッシュ・アンド・チップス(ソルト・アンド・ソース)
- クラナカン(ラズベリーとウイスキークリーム)
実用的なヒント
- エディンバラ城のチケットはオンライン(大人£23.50)のほうが当日窓口(£26.00)より安め。夏は早く売り切れ、オンラインで完売すると城でも販売されません。
- ロージアン・バス(Lothian Buses)は同じコンタクトレス・カードで一日中タッチすれば、TapTapCapにより1日£5.70を超えて請求されません。現金はおつりが出ないので、ちょうどの金額を用意しましょう。
- エディンバラの宿泊には5%のビジター・レヴィ(宿泊税)が加算されます。宿の料金を比べるときは、この額が含まれているか確認を。
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