ハンガリー
ブダペスト
ドナウが分け、橋がつなぐ街
温泉で始まり、夜景で終わる一日
ブダペストは、もともと三つの街でした。ドナウ川(Duna)の西岸、丘のブダ(Buda)とオーブダ(Óbuda)、東岸の平地のペスト(Pest)が1873年にひとつになり、いまの名前が生まれました。いまも橋をひとつ渡るだけで、界隈の表情ががらりと変わります。ブダ側は石畳と城壁が続く静かな丘。ペスト側は大通りとカフェ、夜遅くまで明かりの灯る路地が広がる平地です。朝は開業百年を超える温泉の露天プールに身を沈め、日が暮れたら川向こうの国会議事堂に明かりが入るのを眺める。それがこの街の基本のリズムです。
二つの街を初めて結んだ鎖橋
ブダとペストのあいだに初めて架けられた常設の橋が、セーチェーニ鎖橋(Széchenyi lánchíd)です。セーチェーニ・イシュトヴァーン伯爵の発案で、1839年から1849年にかけて建設されました。1945年に撤退するドイツ軍に爆破されましたが、最初の開通からちょうど100年後の1949年に再び開通しています。 半世紀ぶりの大規模改修を終え、2023年8月に新しい姿で戻ってきました。いまはバスやタクシー、自転車が通り、歩道も再び開いて歩いて渡れます。両端を守る4頭の石のライオンを過ぎて橋の中ほどに立つと、片側に王宮の丘、もう片側にペストの川沿いの建物が、ひとつの景色に収まります。
ブダの丘の上、王宮地区
ブダ側の丘には、ブダ王宮(Budavári Palota)と旧市街が連なっています。この一帯とドナウ河岸は1987年にユネスコ世界遺産に登録され、2002年にはアンドラーシ通り(Andrássy út)まで範囲が広がりました。 丘の上でまず目に入るのは、色とりどりのタイル屋根をのせたマーチャーシュ聖堂(Mátyás-templom)と、その前を囲む白い漁夫の砦(Halászbástya)。砦の七つの石塔は、いまのハンガリーの地に定住したマジャル人の七人の部族長を表しています。上層テラスと塔の入場料がかかるのは決まった時間帯(朝9時から夜7〜9時まで、季節によって異なります)だけで、砦そのものは昼も夜も開いています。日が暮れてから、アーチ越しに川向こうの国会議事堂の灯りが見える場所。この丘でいちばん長く足を止めることになるはずです。
ペストの川辺、国会議事堂と大聖堂
ペスト側の川沿いに268mにわたって延びる建物が国会議事堂(Országház)です。シュテインドル・イムレ(Steindl Imre)の設計で1885年から1902年にかけて建てられましたが、建築家本人は落成式の5週間前に亡くなりました。ドームホールには2000年からハンガリーの聖王冠が24時間の警備のもとで保管されていて、内部は約50分のガイドツアーで見学できます。 街の内側にある聖イシュトヴァーン大聖堂(Szent István-bazilika)は、1851年に着工し、1868年のドーム崩落を経て、献堂は1905年までずれ込みました。高さは国会議事堂のドームと同じ96mで、街でいちばん高い建物。ハンガリー建国の王イシュトヴァーンの右手の聖遺物(Szent Jobb)が納められています。高さ65mのパノラマテラスへは、約304段の階段かエレベーターで上がれます。
温泉の街
ブダペストでは、最高77℃に達する温泉水が、百を超える掘削井といくつかの自然の泉から湧き出ています。いちばん人気があるのは、市民公園(Városliget)の真ん中にあるセーチェーニ温泉(Széchenyi fürdő)。1913年に開業したドームの建物に1927年に屋外エリアが加わり、宮殿のような外壁に囲まれた露天プールには朝の湯気が立ちのぼります。2026年の料金表では、ロッカー付きの1日券が平日(月〜木)で13,200フォリントです。 ゲッレールトの丘のふもとにあるルダシュ温泉(Rudas fürdő)は、450年近い歴史をもつ浴場。金・土曜は夜10時から翌朝3時まで夜間営業があり、入場券はオンラインでのみ購入できます。トルコ風呂(törökfürdő)は火曜が女性専用、水曜は終日と月・木・金曜の午前(10時45分まで)が男性専用です。 ゲッレールト温泉(Gellért fürdő)は改修工事のため2025年10月1日から休業中で、再開は2028年の予定です。
カフェと中央市場
19世紀から20世紀への変わり目、ブダペストにはおよそ500軒のカフェがあったといいます。その時代に生まれた店のいくつかは、いまも営業中です。ヴェレシュマルティ広場(Vörösmarty tér)のジェルボー(Gerbeaud)は1858年、文芸誌『ニュガト(Nyugat)』とゆかりの深いツェントラール・カフェ(Centrál Kávéház)は1887年、ニューヨーク・カフェ(New York Kávéház)は1894年の開業です。 ハンガリーの食材をひと目で見るなら、中央市場(Központi Vásárcsarnok)へ。1万1千㎡のホールの1階には精肉店、青果、乳製品、パンの店が並び、上の階には食堂が集まっています。営業は月〜金曜が6時〜18時、土曜が6時〜16時、日曜が10時〜16時で、祝日は休みです。
日が暮れたら、川辺と7区
日が沈んだら、川に沿って歩いてみてください。ペスト側の遊歩道ドナウ・コルソ(Duna-korzó)からは対岸の王宮と鎖橋の明かりがひと目で見渡せ、ブダ側の川岸に立てば、ライトアップされた国会議事堂が水面に映ります。同じ川辺を昼のうちに眺めておくなら、ドナウ川沿いを走る2番トラムへ。 夜が更けたら、ペストの7区(VII. kerület)へ。古い建物をほぼそのまま生かしてしつらえた「廃墟バー(romkocsma)」が集まる界隈です。同じ区にあるドハーニ街シナゴーグ(Dohány utcai zsinagóga)は1859年に開かれた、ヨーロッパ最大のシナゴーグ。冬には聖イシュトヴァーン大聖堂前の広場にクリスマスマーケットが立ちます(2026年は11月13日〜1月1日)。
おすすめ3泊4日プラン
1日目 — 到着 → セーチェーニ鎖橋を歩いて渡る → ドナウ・コルソで夜景 2日目 — 国会議事堂ツアー → 聖イシュトヴァーン大聖堂のテラス → 2番トラム → 夕暮れのブダ王宮地区と漁夫の砦 3日目 — セーチェーニ温泉 → 英雄広場(Hősök tere)・アンドラーシ通り → 老舗カフェ → 夜は7区へ 4日目 — 中央市場 → 空港(金・土曜の夜に滞在するなら、ルダシュ温泉の夜間営業もおすすめです)
- おすすめの季節
- 4〜5月(春の川辺散歩)、9〜10月(涼しい秋)、12月(クリスマスマーケット)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- グヤーシュ(パプリカ風味の牛肉スープ)
- ランゴシュ(サワークリームとチーズをのせた揚げパン)
- パプリカーシュ・チルケ(鶏肉のパプリカ煮込み)
- ドボシュ・トルタ(キャラメルをのせた層のケーキ)
実用的なヒント
- セーチェーニ温泉はスリッパの着用が必須ですが、タオルやスリッパの無料提供もレンタルもありません。持参するか、ショップで購入を。2025年8月1日からは14歳未満は入場できません。
- ハンガリーの通貨はフォリント(HUF)。ユーロが使える店でもレートが不利なことが多く、空港の両替所のレートがいちばん悪いので、到着時の両替は必要な分だけにしておきましょう。
- レストランの伝票に10〜15%のサービス料(szervizdíj)が含まれていれば、チップは不要です。含まれていなければ10%ほどが一般的です。
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