ポーランド
ワルシャワ
廃墟から建て直した首都
ショパンの調べとミルクバーの一皿
ワルシャワ旧市街市場広場(Rynek Starego Miasta)に立つと、色とりどりの家々が何百年も前からそこにあるように並んでいます。けれどこの広場は第二次世界大戦で90%が破壊され、いま目にする姿は1949年から積み直したもの。再建が始まってわずか4年後に、奉献式が行われました。ワルシャワを旅することは、建て直されたものと生き残ったものを並べて読むこと。毎年8月1日の午後5時に街が1分間止まるのも、ショパンの心臓が教会の柱の中に眠っているのも、この街なりの記憶の守り方です。
建て直された旧市街
広場の中央には、盾と剣を手にした人魚(Syrenka)の像が立っています。ワルシャワの紋章であり、街を守る存在です。 少し歩くと、王宮(Zamek Królewski)の前にジグムント3世の記念柱(Kolumna Zygmunta III Wazy)がそびえています。1644年に建てられた、ワルシャワ最古の世俗のモニュメントです。王宮は、ヨーロッパ初の成文憲法である1791年の5月3日憲法が採択された場所。館内の「カナレットの間」には、カナレットと呼ばれた画家ベルナルド・ベロット(Bernardo Bellotto)によるワルシャワの風景画が並び、さっき歩いてきた通りに絵の中で再会できます。 旧市街を上から眺めるなら、聖アンナ教会(Kościół św. Anny)の鐘楼へ。石段150段を上りきると、旧市街の屋根の連なりと、ヴィスワ川(Wisła)の向こうに広がる東側の街並みが見渡せます。
8月1日、午後5時
1944年8月1日、ポーランド国内軍(Armia Krajowa)がドイツ占領軍に対して蜂起しました。ワルシャワ蜂起は63日間続き、鎮圧されたあと、ドイツ軍は市民に容赦ない報復を加え、街を徹底的に破壊しました。 だから毎年8月1日の午後5時、ワルシャワは1分間止まります。サイレンが鳴り響くあいだ、トラムもバスも止まり、歩く人も車もその場で動きを止めます。蜂起軍が「自由(Wolność)」の頭文字から「W」と呼んだ、まさにその時刻です。 ワルシャワ蜂起博物館(Muzeum Powstania Warszawskiego)は、ドイツ軍と戦ったワルシャワの人々の物語をたどる場所。高さ32mの塔からは、蜂起の舞台となった街が見渡せます。
ショパンをたどる王の道
フレデリク・ショパン(Fryderyk Chopin)は幼少期と青年期をワルシャワで過ごし、1830年にウィーンへ発ったまま二度と戻りませんでした。代わりに帰ってきたのが心臓です。彼の死後、長姉ルドヴィカが心臓をワルシャワへ持ち帰りました。いまは聖十字架教会(Bazylika Świętego Krzyża)の柱の中に納められています。 王宮からワジェンキ公園(Łazienki Królewskie)、そして「ポーランドのヴェルサイユ」と呼ばれるヴィラヌフ宮殿(Pałac w Wilanowie)まで、かつての王の三つの住まいを結ぶのが「王の道(Trakt Królewski)」。ショパンゆかりの場所には、ボタンを押すと彼の曲が流れる「ショパンのベンチ」が置かれています。 夏は日曜日を空けておきましょう。ワジェンキ公園のショパン像の前で、正午と午後4時に無料の野外コンサートが開かれます。2026年は7月5日から9月27日まで。期間は年によって変わることがあります。なお、オストログスキ宮殿のショパン博物館は2026年の1年間休館すると告知されました。2027年以降に訪れるなら、再開しているかを先に確かめておきましょう。
向かい合う宮殿とタワー
パリにエッフェル塔があるなら、ワルシャワには街のほとんどどこからでも見える文化科学宮殿(Pałac Kultury i Nauki)があります。1949年にスターリンが最初に提案し、1952年5月に着工、1955年7月21日に開館。尖塔の先まで230.68m、3,300近い部屋に、劇場四つと映画館、博物館、大学までが入っています。 30階、地上114mの展望テラスに上がると、宮殿のまわりに建ったガラスのビル群が広がります。なかでも2022年完成のヴァルソ・タワー(Varso Tower)は尖塔を含めて310mと、EUでいちばん高い建物。地上230mの展望台もEUで最も高く、そこに立つと文化科学宮殿の尖塔の先とほぼ同じ目線になります。
ミルクバーとワルシャワの味
最初の食事はミルクバー(bar mleczny)で。共産主義時代の空気がそのまま残る大衆食堂で、何十年も家庭的な料理を手ごろな値段で出し続けている店が少なくありません。ピエロギ(pierogi)は肉、キャベツ、きのこからフルーツまで具がさまざま。ジュレック(żurek)は、ライ麦のサワー種で酸味をつけた肉のブイヨンに、ゆで卵と白ソーセージを入れたスープです。 デザートにはヴゼトカ(wuzetka)を。ココア生地にミルククリームを重ねたケーキで、名前は戦後すぐ旧市街の下を通るように造られたW-Z通りから来ています。再建の時代がケーキの名前にまで残っているわけです。ヴェデル(E. Wedel)のチョコレートカフェでは、ホットチョコレートと「鳥のミルク(ptasie mleczko)」のプラリネをどうぞ。 じゃがいも生地の団子にカリッとした豚の脂身と炒め玉ねぎをのせたピズィ(pyzy)も探してみてください。ワルシャワっ子なら誰もが知る味です。
川向こうのプラガ
ヴィスワ川東岸のプラガ(Praga)は、第二次世界大戦の破壊をほぼ免れ、戦前の建物がそのまま残る地区です。建て直された旧市街を見てから川を渡ると、ワルシャワのもともとの顔に出会えます。古い中庭のほとんどに小さな祭壇があり、ドイツ占領下で祈りと慰めの場として作られたもの。いまも100ほどが残り、住民が代々守り続けています。 タルゴヴァ通り(Targowa)からゾンプコフスカ通り(Ząbkowska)へ曲がると、13番地の中庭で1870年ごろに建てられた木造の回廊に出会えます。ウォッカ工場の跡地をよみがえらせたコネセル(Koneser)には、旧蒸留所の建物にポーランド・ウォッカ博物館が入っています。 夏の夕方は、野外フェスティバルやコンサートが開かれるヴィスワ川沿いへ出かけてみてください。
- おすすめの季節
- 5〜9月(公園・ヴィスワ川沿い)、12月(クリスマスのイルミネーション)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- ピエロギ(具が多彩なポーランドの餃子)
- ジュレック(ライ麦サワー種のスープ)
- ピズィ(ワルシャワのじゃがいも団子)
- ヴゼトカ(W-Z通りが名前の由来のケーキ)
実用的なヒント
- 市内(第1ゾーン)の公共交通は75分券4.40 PLN、24時間券15 PLN、3日券36 PLN。24時間券は最初に刻印した時点から24時間使え、空港から市内へは75分以上の券を買うよう空港が案内しています。
- ポーランドではほとんどの日曜日が休業日で、店は閉まります。例外はジャプカ(Żabka)のような小さな食料品店なので、買い物やおみやげ探しは土曜日までに済ませておきましょう。
- ワルシャワ蜂起博物館は火曜日が休館、木曜日は入館無料。通常料金は35 PLNで、見学には2時間ほどかかります。
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