中国
深セン
国境の小さな町から育った都市
電子街と湾岸の遊歩道がひとつの街に
深圳は1979年3月に市となり、翌年8月に中国初の経済特区に指定されました。小さな国境の町だった場所に、2024年末時点で1,798万人が暮らしています。人の一生より短い時間でここまで育った都市です。だからこの街の旅は、古い遺跡を巡るよりも、いま何をつくり、何を売り買いしているのかをのぞく旅に近いもの。電子部品市場のざわめき、中心部の丘からの眺め、海沿いに続く遊歩道、そしてその合間に残る1394年の古い城まで。香港から高速鉄道で最短14分のこの街を、順に歩いてみましょう。
半世紀に満たない街の顔
深圳市政府は、この街を小さな国境の町から現代的な国際都市へと生まれ変わった場所だと紹介しています。実際に歩いてみると、古い路地より先に、広い大通りと新しい地下鉄駅が目に入ります。地下鉄だけで18路線。旅の動線も、ほとんど駅名で組むことになります。 街は東西に長く延びています。東の羅湖は香港と境を接する旧市街、中央の福田は市政府と金融街が集まる中心部、西の南山と蛇口は海に面した地区。さらに東の大鵬半島まで行くと、ビル群が途切れて山と浜辺が始まります。年平均気温23℃の亜熱帯の街なので、冬でも厚手のコートが要る日はまれです。
華強北と大芬 ― つくる街、売る街
福田の華強北は、深圳らしさがいちばんよく見える通りです。福田区政府が「中国一の電子街」と呼ぶこの一帯は、ビルごとに扱う品が決まっています。 • 賽格電子市場 ― 電子部品とパソコン • 賽格通信市場 ― 充電器・モバイルバッテリー。上の階には安い保護フィルム • 遠望数碼城 ― スマートフォン。3階から上は1台でも卸に近い価格の店が多い • 飛揚時代大厦 ― 中古iPhoneと修理 賽格電子市場の1階にはコンデンサーや抵抗、チップ、センサーといった小さな部品が集まり、遠望数碼城の2階ではロボットやVR機器、3Dプリンターを実際に試せます。部品が売られ、組み立てられ、完成品になってまた売られる流れを、数ブロックの中でひと通り見られるわけです。地下鉄2・7号線の華強北駅D1出口を出ればすぐです。 龍崗区布吉の大芬油画村は、区政府が中国最大の油絵の制作・取引拠点と紹介する場所です。路地ごとにアトリエと画廊が続き、絵が描かれる場所と売られる場所が同じ町内にあります。
蓮花山から見下ろす福田
街の成り立ちをひと目で見たいなら、福田の蓮花山公園へ。地下鉄2号線の蓮花西駅A1出口から近く、山頂の広場に立つと福田中心業務地区のビル群が眼下に広がります。 広場には高さ10mの鄧小平像が立っています。中央政府が承認した初めての鄧小平の都市彫像だそうです。経済特区の時代を開いた指導者の像と、その時代が築いたスカイラインを一度に見ることになります。散策を夕方近くにすれば、下りる頃にはオフィスの窓に明かりがともり始めます。
南山 ― 600年を超える古城と海辺の廟
深圳に古いものはない、というのは半分だけ正解です。南山の南頭古城は1394年、東莞一帯を守るために築かれた城で、新安古城とも呼ばれます。のちに新安県の役所が置かれ、いまも関羽を祀る関帝廟や清代様式の民家、祠が路地の合間に残っています。地下鉄1号線の桃園駅B出口から徒歩5分。 さらに海側へ下ると、蛇口の赤湾に天后宮があります。北宋初期に地元の人々が建て始め、明・清の時代に大きく拡張されたそうです。海の女神・天后が航海中の鄭和を救い、鄭和が皇帝に廟の拡張を願い出たという伝説が残っています。開門は午前8時から午後5時30分まで。
海へ ― 深圳湾から大鵬半島まで
深圳湾沿いには、海辺の遊歩道が長く続いています。蛇口の南海酒店からマングローブ保護区まで約15km。片側は海、もう片側は芝生と海岸林です。一部を歩くだけでも、街の西端を海の側から眺めることになります。 遊歩道の東端には福田マングローブ生態公園があります。この湿地には194種の鳥が生息し、うち23種が絶滅危惧種だそうです。深圳河の対岸は香港の米埔自然保護区。川ひとつを隔てて、二つの都市の湿地が向かい合っています。 海をもっと見たいなら、街の反対側、東の大鵬半島へ。半島南部の西涌ビーチは南シナ海に面し、隣の東涌ビーチとともにバックパッカーやハイカー、サーファーが訪れる浜です。M231・M232番のバスが東涌・西涌ビーチへ向かうので、丸一日空けて出かけてください。
食べ方 ― 広東と潮汕のあいだ
深圳の食卓の中心は広東料理と潮汕料理です。市政府の紹介によると、黒珍珠餐庁指南(ブラックパール・レストランガイド)やミシュランガイドに載る店を目当てに毎年中国各地から食通が集まり、高級な和食やフランス料理から広東・潮汕料理までがひとつの街にそろっています。 朝は点心を何皿か、お茶と一緒にいただく広東式の朝の飲茶(早茶)から。夜は潮汕式の牛肉火鍋がおすすめです。部位ごとに切り分けた生の牛肉を澄んだスープにさっとくぐらせて食べるもので、部位によって火の通し時間が違うため、店員さんが教えてくれることもあります。広東式のローストグースや、宝安・沙井の牡蠣料理もこの土地で味わいたい味です。
おすすめ3泊4日プラン
Day 1 ― 到着 → 福田のホテルにチェックイン → 夕方の蓮花山公園 → 夕食は潮汕牛肉火鍋 Day 2 ― 華強北の電子街 → 大芬油画村 → 夕暮れの深圳湾遊歩道と福田マングローブ生態公園 Day 3 ― 大鵬半島の西涌・東涌ビーチで一日 Day 4 ― 朝の飲茶(点心) → 南頭古城 → 赤湾天后宮 → 出国
- おすすめの季節
- 10〜12月(乾燥して涼しい)、3〜4月(暑くなる前)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- 潮汕牛肉火鍋(部位ごとの生牛肉)
- 広東式点心(朝の飲茶・早茶)
- ローストグース(広東式焼味)
- 牡蠣料理(宝安・沙井の牡蠣)
実用的なヒント
- 香港から高速鉄道で入るなら、香港西九龍駅の地下3階(B3)で香港の出境と中国本土の入境の手続きをまとめて済ませます。手続きは発車90分前から可能で、通常30〜45分ほどかかります。
- 対象店舗で一度に200元を超える買い物をすると、出国を待たずに店頭で税金の還付を受けられます(税率13%の品は11%還付)。事前承認ができるクレジットカードが必要で、購入から17日以内に出国しなければなりません。
- 華強北では値段交渉が一般的。いくつかの店で価格を比べ、返品や不良品のトラブルに備えてレシートは必ず保管しておきましょう。
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