韓国
ソウル
城郭の内に王宮、川辺に夕日
旅人の歩幅でソウルを歩く
駱山(ナクサン)の城郭道を登りきったのは、日が仁王山(イナンサン)のほうへ傾くころでした。城壁の内側では大学路(テハンノ)や鍾路(チョンノ)の明かりがひとつ、またひとつと灯り、外側では昌信洞(チャンシンドン)の屋根が斜面に沿って幾重にも連なっていました。用事があるときに行き来するだけだったソウルが、その夕方初めて、城壁に囲まれた古い都に見えました。このガイドでは、まず城郭と王宮で街の骨格をつかみ、韓屋の路地や市場、漢江(ハンガン)で一日一日を満たしていく順にまとめました。仁川や金浦から入り、古都と今の暮らしのつながりを見てみたい方への案内です。
城郭道 — 街の輪郭を歩く
ソウルの骨格をいちばん早くつかむ方法は、城壁の上に立ってみること。漢陽都城(ハニャンドソン)は1396年、白岳(北岳山)・駱駝(駱山)・木覓(南山)・仁王の四つの山の稜線に沿って築かれた城郭で、全長は約18.6km。1910年まで514年にわたり、都の城壁の役割を果たしました。最初に築かれてから何度も積み直されたため、同じ城壁でも区間ごとに石の大きさや削り方が違います。 一周を目指すより、一区間だけ選ぶのがおすすめです。興仁之門(フンインジムン)から恵化門(ヘファムン)までの駱山区間は2.1km。日の入りの1時間ほど前に登り始めれば、夕焼けと夜景を順に眺められます。城壁の外の昌信洞は小さな縫製工場が集まる町で、昼間に路地へ下りると、ミシンの音が窓の外まで聞こえてきます。
王宮 — 山を背にした王の住まい
景福宮(キョンボックン)の勤政殿の前庭に立つと、屋根の向こうに北岳山の稜線がそのまま続いて見えます。1395年に朝鮮王朝の正宮として建てられ、1592年の壬辰倭乱(文禄の役)で焼失。270年あまりを経た1867年になって、ようやく再建されました。その長い空白の間、王たちが主に使ったのは東にある昌徳宮(チャンドックン)です。 1405年に建てられた昌徳宮は、周囲の地形に逆らわずに殿閣を配し、1997年にユネスコ世界遺産に登録されました。北側の後苑に入るには、殿閣の観覧券に加えて後苑観覧券(19〜64歳5,000ウォン)が必要です。後苑で最初に現れる池、芙蓉池は、四角い池の中央に丸い島を置いた形。天は丸く地は四角いという古い考え方を写したものです。 後苑は決められた回にだけ入れる制限観覧です。韓国語の回は午前10時から毎正時(最終回は3〜10月が16時、11〜2月が15時)で、1回100人のうち50人がインターネット予約、50人が現地販売。日程が決まったら先に予約しておくと安心です。英語(10:30・11:30・14:30、3〜11月は15:30も)・日本語(水・金・日の13:30)・中国語(火・木・土の12:30)の回は別にあり、その時間帯は外国人の同行者がいない韓国人は入れません(同行する場合は2人まで)。 日が暮れてから王宮を歩きたいなら、徳寿宮(トクスグン)と昌慶宮(チャンギョングン)を覚えておいてください。どちらも一年を通して夜9時まで(入場は8時まで)開いています。
韓屋の路地 — 北村と西村
北村(プクチョン)の韓屋は朝鮮時代の両班の家がそのまま残ったものと思われがちですが、今韓屋がぎっしり並ぶ嘉会洞11番地・31番地、三清洞35番地、桂洞135番地一帯は、いずれも1930年代前後にできた住宅地です。ソウルが広がっていくなかで、住宅経営会社が大きな敷地や山林を買い取り、中小規模の韓屋をまとめて建てました。庭が小さく、軒と軒が触れそうなほど家が寄り添っているのはそのためです。 景福宮の西側、西村(ソチョン)は、韓屋の間に古い市場や2階建ての洋館、小さな書店が混じり、住む人の日常がより近くに感じられます。通仁市場(トンインシジャン)で昼食をとり、仁王山の麓の水声洞渓谷(スソンドンケゴク)まで歩いて上ると、画家・鄭敾(チョン・ソン)が絵に描いた石橋、麒麟橋を今もその場所で見ることができます。
市場と路地 — ソウルの食卓
広蔵市場(クァンジャンシジャン)の屋台通りに入ると、まず目に入るのは、店先で水に浸した緑豆を石臼でひく様子。その生地を油をたっぷりひいた鉄板で厚めに焼くピンデトックは、縁がカリッとしているうちに食べたいもの。隣の屋台では、細切りの梨と卵黄をのせたユッケを出しています。市場から東へ少し歩けば、大きなアルミ鍋で鶏を丸ごと一羽煮込むタッカンマリ横丁です。 日が暮れたら乙支路(ウルチロ)へ。昼は印刷所や工具店が開く乙支路3街の路地が、夜になるとノガリ(干したスケトウダラの幼魚)の店先に並べたプラスチックの椅子で埋まります。焼いたノガリ一皿に生ビール一杯が、この路地の定番の注文です。
漢江 — 川辺で過ごす夕暮れ
漢江沿いには11の漢江公園があり、夕暮れどきなら望遠(マンウォン)漢江公園がおすすめです。望遠市場でコロッケやトッポッキなどの軽食を買って川辺の階段に座ると、自転車で行き交う人たちの向こうで、川面が金色から藍色へと変わっていきます。公園のコンビニにある即席ラーメンの機械でラーメンを一杯作れば、ソウルで暮らす人たちの見慣れた夕方そのもの。 昼の時間に余裕があれば、街の東側にあるソウルの森と聖水洞(ソンスドン)を組み合わせてみてください。靴の工房や古い工場の建物がカフェやセレクトショップに生まれ変わった町で、工場時代の赤レンガや鉄製シャッターを残したまま営業している店が多くあります。
仁川・金浦からソウルへ
国際線の多くは仁川空港に到着します。空港鉄道(AREX)の直通列車は専用の乗車券で乗る列車で、ソウル駅までノンストップ、30〜40分間隔で走っています。各駅停車の一般列車は時間がかかるものの、金浦空港・弘大入口(ホンデイック)・孔徳(コンドク)にも停まるので、宿の場所によってはこちらが便利です。羽田など一部の便は金浦空港に到着し、金浦空港駅で地下鉄5号線・9号線と空港鉄道に乗り換えられます。鍾路と乙支路、北村と益善洞のように隣り合う町は、一、二駅分を歩いてつなぐと、路地の老舗や工房を見逃しません。 帰りは、直通列車の利用者ならソウル駅地下2階の都心空港ターミナルで搭乗手続きと手荷物の預け入れ(5:20〜19:00)、出国審査(5:30〜19:00)を済ませられます。対応する航空会社はターミナルによって異なるので、利用する便を事前に確認しておきましょう。手続きの締め切りは、第1ターミナル発が出発3時間前、第2ターミナル発が3時間20分前です。
おすすめ3泊4日
Day 1 — 仁川空港に到着 → 空港鉄道でソウル駅へ → 鍾路・乙支路の宿 → 徳寿宮の石垣道と夜の徳寿宮 → 乙支路3街のノガリ路地 Day 2 — 景福宮 → 北村の韓屋路地 → 西村・通仁市場で昼食 → 水声洞渓谷 → 益善洞(イクソンドン)で夕食 Day 3 — 昌徳宮と後苑 → 広蔵市場のピンデトック → 興仁之門から駱山の城郭道で夕日 → 梨花洞(イファドン)・大学路 Day 4 — ソウルの森・聖水洞 → 望遠市場 → 望遠漢江公園 → 弘大入口から空港鉄道で仁川空港へ
- おすすめの季節
- 4〜5月(春の花と新緑)、9〜11月(澄んだ秋と紅葉)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- ピンデトック・ユッケ(広蔵市場)
- 平壌冷麺(乙支路・麻浦の老舗)
- タッカンマリ(鍾路5街の路地)
- ノガリと生ビール(乙支路3街の路地)
実用的なヒント
- 王宮と宗廟は休みの曜日が異なります。景福宮・宗廟は火曜、昌徳宮・徳寿宮・昌慶宮は月曜が定休日。韓服を上下そろえて着ている場合と、18歳以下・65歳以上の外国人は入場無料です。ただし昌徳宮の後苑はこの無料の対象外で、無料になるのは6歳以下と、国家有功者・障害者(韓国人)のみです。
- 北村路11ギル一帯(北村レッドゾーン)は、観光目的の訪問が午前10時〜午後5時に限られています。2025年3月からは、この時間外の観光に過料が科されます。
- 地下鉄やバスに一日に何度も乗るなら、気候同行カード(Climate Card)の短期券(1・2・3・5・7日券)を。1日券は5,000ウォン(2024年の発売時の価格、カード代別)で、ソウルの地下鉄とソウル市のバスが乗り放題です。明洞やソウル観光プラザの観光案内所、地下鉄1〜8号線の駅の顧客安全室、駅近くのコンビニでカードを買ってチャージし、チャージした日から期間が始まります。使えるのはソウル市内と、仁川国際空港で降りる区間だけです。
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