タイ
プーケット
タイ最大の島、プーケット
錫の時代の路地と、アンダマン海
プーケットと聞くと海を思い浮かべがちですが、この島の古い物語はビーチではなく鉱山から始まります。錫を掘っていた時代に中国系移民が築いた街並みが島の東側のプーケットタウンに残り、路地の茶店や麺の店は、当時から受け継がれてきた料理を今も出しています。プーケットの一日は、町と海を行き来しながら過ぎていきます。朝はショップハウスの路地の茶店で点心のせいろのふたを開け、昼は西海岸の砂浜で寝転び、夕暮れには島の南端の岬に立って、海に沈む夕日を見送ります。
錫鉱山の島
19世紀から20世紀初めにかけて、世界の貿易国がこの島に目を向けた理由は、地中に豊富に眠る錫でした。最初に道具と風習を携えてやって来たのは、ホッケンと呼ばれる福建出身の中国の人々。続いて福建各地やマレーシアのペナンから労働者が渡ってきました。 錫の時代は過ぎても、そのころ持ち込まれた暮らしは島にそのまま残っています。廟ごとに立ちのぼる線香の煙、麺料理の名に付く「ホッケン」という言葉、朝の食卓に並ぶ点心。どれもあの時代から続いてきたものです。
オールドタウン——ショップハウスの路地の朝
旧プーケットタウンのショップハウスは、タラン通り(Thalang Road)、ディブック通り(Dibuk Road)、クラビ通り(Krabi Road)、そして短い路地ソイ・ロマニー(Soi Rommanee)に集まっています。間口が狭く奥に長い建物が軒を連ね、中国式の建築にヨーロッパ風のアーチや鎧戸を加えたこの様式は「シノ・ポルトギース(Sino-Portuguese)」と呼ばれます。今も家族が暮らしたり商いをしたりしている家が多く、保存地区というより、人が暮らす町に近い雰囲気です。 この路地は早朝に歩いてみてください。半分ほど上げたシャッターの前で店主が鉢植えに水をやり、茶店の奥では竹のせいろから白い湯気が立ちのぼります。日曜の夕方には同じタラン通りがラートヤイ(Lard Yai)のナイトマーケットに変わり、朝は静かだった通りが屋台と音楽で埋まります。
食——受け継がれてきたレシピ
プーケットは2015年、東南アジアの都市として初めて、ユネスコ創造都市ネットワークの食文化分野に加わりました。ユネスコはこの島を紹介する際、家庭や地域で代々受け継がれてきた古いレシピを挙げています。 • ミー・ホッケン(Mee Hokkien)——太い黄色の麺を魚介や豚肉、野菜と炒めた麺料理。名前の「ホッケン」は、島に渡ってきた福建の人々を指します。 • ムー・ホン(Moo Hong)——豚バラ肉を黒胡椒の粒とにんにく、醤油でじっくり煮込んだ料理。白いご飯にのせて食べます。 • オータオ(O-Tao)——小粒の牡蠣とタロイモ、卵を一緒に炒め、もやしと豚皮の揚げものをのせた一皿。 • カノムチーン(Khanom Jeen)——細い米麺にカレーをかけ、かごに盛られた生野菜を好きなだけ添える朝ごはん。 辛い南部カレーと中国風の煮込み、ムスリムの店のロティが同じ町に並んで売られているのも、この島がたどってきた歴史そのままの風景です。
西海岸——ビーチを南へ
プーケットで名の知られたビーチは、ほとんどがアンダマン海に面した西海岸に並んでいます。 • パトン(Patong)——島でいちばんにぎやかなビーチ。夜はバングラー通り(Bangla Road)が音楽とネオンで満たされます。 • カロン(Karon)——長く広い砂浜で、朝の散歩にぴったり。 • カタ(Kata)・カタノイ(Kata Noi)——丘の間の入り江に収まった、こぢんまりとしたビーチ。 • ラワイ(Rawai)・ナイハーン(Nai Han)——パトンの喧騒から一歩離れた、島の南端の町。 カタノイの南の丘にあるカロン・ビューポイント(Karon Viewpoint)に上ると、カタノイ、カタ、カロンの3つのビーチを一望できます。旧名はカタ・ビューポイント、タイ語名はカオ・サーム・ハット(Khao Sam Hat)です。 ナイハーンとラワイの間に突き出たプロムテープ岬(Laem Promthep)は、夕日を見に人が集まる場所です。晴れた日には灯台の屋外テラスから、ピピ島(Ko Phi Phi)やラチャ・ヤイ島、ラチャ・ノイ島(Ko Racha Yai・Racha Noi)の島影まで見渡せます。
島の外へ——パンガー湾とピピ島
数日滞在するなら、一日は船で島の外へ出てみてください。北東のパンガー湾(Phang Nga Bay)には、石灰岩の峰が海からそびえ立っています。そのひとつカオ・ピンカン(Khao Phing Kan)は、1974年の映画『007/黄金銃を持つ男』のロケ地となって以来、「ジェームズ・ボンド島」と呼ばれています。沖に釘のように突き立つ岩の柱が、カオ・タプー(Khao Tapu)です。 南東のピピ島は、行政区分ではクラビ県に属します。ピピ・レ島(Ko Phi Phi Le)のマヤ湾(Maya Bay)は、2000年の映画『ザ・ビーチ』で世界に知られるようになりました。ただし、マヤ湾と隣のローサマ湾(Loh Samah Bay)は、雨季の安全と自然の回復のため、毎年8月1日から9月30日まで閉鎖されます。シミラン諸島(Mu Ko Similan)のように、南西モンスーンの時期に閉鎖される海洋国立公園もあります。
モンスーンとベジタリアン・フェスティバル
プーケットの一年は風で分かれます。5月から10月までは南西モンスーンが西海岸に雨雲を運んできますが、モンスーンの時期だからといって一日中雨が続くわけではありません。 島のホッケンの伝統をいちばん間近で見られるのは、ベジタリアン・フェスティバル(Phuket Vegetarian Festival)の期間です。旧暦9月の1日から9日目の夜まで続くため新暦の日程は毎年変わり、2026年は10月10〜18日でした。プーケットタウンの40を超える廟が加わる祭りで、心身を清める意味を込めて火の上を歩く「コイ・ホイ(Koi Hoi)」もこの時期に行われます。期間中、通りや屋台に掲げられる黄色い旗が、この祭りのしるしです。
おすすめ4泊5日プラン
Day 1 — プーケット国際空港に到着 → スマートバスでカタ・カロンのホテルにチェックイン → 夕方のビーチ散歩 Day 2 — オールドタウンで朝の点心 → タラン通り・ソイ・ロマニーの路地 → 午後はビーチ → 日曜ならラートヤイのナイトマーケット Day 3 — パンガー湾またはピピ島のボートツアー(終日) Day 4 — ワット・チャロン(Wat Chalong)・ビッグ・ブッダ(Big Buddha) → カロン・ビューポイント → ラワイ → プロムテープ岬の夕日 Day 5 — ミー・ホッケンを一皿 → 空港
- おすすめの季節
- 11〜4月(乾季・穏やかな海)
- おすすめの日数
- 4〜6日
食べたいもの
- ミー・ホッケン(魚介の焼きそば)
- ムー・ホン(黒胡椒の豚バラ煮込み)
- オータオ(牡蠣とタロイモの卵炒め)
- 点心(オールドタウンの朝の茶店)
実用的なヒント
- タイ入国には、デジタル入国カード(TDAC)を tdac.immigration.go.th で事前に提出する必要があります。到着の3日前から提出できます。
- 空港からパトン、カロン、カタを経てラワイまでスマートバスが運行。空港〜ラワイの運賃は100バーツです(運行会社の時刻表による)。
- ビーチに赤い旗が立っていれば遊泳禁止の合図。モンスーンの時期は高波や見えにくい離岸流が起きることがあります。
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