ベトナム
ダラット
標高1,500mの高原の街
松林とコーヒー、涼しい朝市
ハノイやホーチミンから飛行機で到着し、空港の外へ出ると、まず空気の違いに気づきます。ダラット(Đà Lạt)はベトナム中部高原、標高1,500mの街。日中は日差しが暖かく、日が沈むと長袖を羽織りたくなります。松林の間にはインドシナ時代のヴィラやアール・デコの建物が残り、郊外の丘にはコーヒーの木と野菜畑が続きます。朝の路地には炭火で焼くバインカンの香りが漂い、夜は温かい肉団子スープにバゲットを浸して味わう。ビーチリゾートの多いベトナムで、森と湖のそばでひと息つくための街です。
高原の避暑地
ダラットは、フランスの都市計画家が、植民地に暮らすフランス人とベトナムの上流層のための避暑地として設計した街です。療養施設やゴルフ場、公園まで計画に含まれていました。1922年開業のダラット・パレス・ヘリテージ・ホテル(Dalat Palace Heritage Hotel)の開放的な眺めと重厚な内装には、植民地の官僚とその家族が出入りしていた時代の空気が今も残っています。午後のお茶に立ち寄るのにぴったりです。1933年開場のダラット・パレス・ゴルフクラブは、ベトナムで最も古いゴルフ場のひとつ。 市内を歩くと、古びたインドシナ時代のヴィラにたびたび出会います。1900年前後のフランスの建築の流行に地元の装飾を加えたホテルや住宅が多く、教会やアール・デコのホテルなど植民地時代の建物も街のあちこちに残っています。
スアンフーン湖と朝の市場
街の中心はスアンフーン湖(Hồ Xuân Hương)。街の真ん中には、何層にもなったダラット市場(Chợ Đà Lạt)があります。アーティチョーク、アボカド、アスパラガスなど、高地でよく育つ作物がこの街からベトナム各地へ出荷されます。下の階の売り場には色鮮やかな果物や野菜があふれ、市場の外の歩道には花、フォー、乾物を売る露店が並んでいます。 上の階の奥では、一日中ミークアン(Mì Quảng)が作られています。ターメリックで黄色く染めた米麺に豚肉をのせた中部の麺料理です。市場は早朝に訪ねるのがおすすめなので、湖をひと回り歩いてから市場へ向かってみてください。周りの店にはダラット名物のフルーツの砂糖漬け、ショウガの砂糖漬け、コーヒー、アーティチョーク茶が並び、おみやげ選びにも向いています。
朝はバインカン、夜はバインミー・シウマイ
ダラットの料理は、ここで生まれたものより、ほかの地方から移り住んだ人々が持ち込んだ料理を高原の気候と野菜に合わせて整えたものが多いのが特徴です。移住者の多くが中部出身のため中部の料理がとくに多く、フォーのようにハノイ式を受け継ぐものもあります。 • バインカン(Bánh căn)— フエ(Huế)の蒸した米粉菓子バインベオから派生した、ひと口サイズの米粉焼き。涼しいダラットでは炭火のこんろで焼き、うずらの卵かアヒルの卵をのせて出します。朝はホアビン(Hòa Bình)周辺で探してみてください。 • バインミー・シウマイ(Bánh mì xíu mại)— 冷たいハムを挟むホーチミン式とは違い、温かい肉団子スープ一杯と焼いたバゲットが一緒に出てきます。千切りのパパイヤとハーブを添え、パンをスープに浸して。 • フォー(Phở)— ハノイ式のフォーに、ハーブの皿と、フランス植民地時代に伝わった西洋レタスが添えられるのがダラット流です。
駅からチャイマットへ
植民地時代の建物であるダラット駅(Ga Đà Lạt)は、いまはベトナムの南北統一鉄道とつながっていません。代わりにチャイマット(Trại Mát)行きの列車に乗り、車窓の景色を眺めながら進んで降りれば、全体がモザイクに覆われたリンフック寺(Chùa Linh Phước)に立ち寄れます。写真を撮る人で混み合う場所なので、静かな寺を求めるなら市内のリンソン寺(Chùa Linh Sơn)も覚えておきましょう。1940年に小さな丘の上に建てられた寺で、回廊と中庭は祈りに訪れる人々に開かれています。 市内にはクレイジーハウス(Biệt thự Hằng Nga)もあります。建築家ダン・ヴィエット・ガー(Đặng Việt Nga)が1990年2月に建て始めた建物で、客室11室を備えた宿でもあります。
ランビアン山麓のコーヒー
フランス人は、この地域に暮らす少数民族コホ(K'Ho)族に自分たちのコーヒーの木の世話を任せました。こうしてコホ族は20世紀初めには事実上ベトナム最初のコーヒー農家となり、1940年代ごろにはコホ族の農家ブライ・コ・リエン(Brai Co Lieng)が、フランス人のコーヒーの木から得たアラビカの種を家の農園に植えました。 ランビアン山(Núi Langbiang)の斜面にあるコホ・コーヒー(K'Ho Coffee)の農園は、コホ族の約50世帯が共に働く協同組合です。コーヒーの木に囲まれたガーデンカフェがあり、一世紀前にダラットへ持ち込まれた種から続くアラビカの栽培と加工の過程を見せる見学ツアーも実施してきました。昔のダラットの雰囲気を味わうなら、市内のカフェ・トゥン(Cà phê Tùng)へ。色あせた店内に座っていると、数十年前に戻ったような気分になります。
郊外の森と湖
フオンホアンの丘(Đồi Phượng Hoàng)にあるチュックラム禅院(Thiền viện Trúc Lâm)は、王位を退いて出家した陳朝の王、チャン・ニャン・トン(Trần Nhân Tông)が開いた禅の伝統を受け継ぐ場所です。花の庭園と仏殿を抜け、松の木陰に腰を下ろすと、350ヘクタールに広がるトゥエンラム湖(Hồ Tuyền Lâm)を見下ろせます。 もっと体を動かしたいなら、ダタンラの滝(Thác Datanla)でロープ下降、岩登り、泳ぎ、滑り降りを組み合わせたキャニオニングに挑戦するか、ランビアン山の頂上まで歩いて登ってみてください。時間に余裕があれば、7万ヘクタールに及ぶビドゥップ・ヌイバ国立公園(Vườn quốc gia Bidoup Núi Bà)で数日キャンプをしながらトレッキングをしたり、珍しい鳥を探したりすることもできます。
3泊4日のおすすめ日程
1日目 — リエンクオン空港に到着 → チェックイン → スアンフーン湖を散歩 → 夕食はバインミー・シウマイ 2日目 — 早朝のダラット市場でミークアン → ダラット駅からチャイマット行きの列車 → リンフック寺 → クレイジーハウス 3日目 — ランビアン山麓のコーヒー農園 → チュックラム禅院とトゥエンラム湖 → ダラット・パレス・ヘリテージ・ホテルで午後のお茶 4日目 — ホアビン周辺でバインカンの朝食 → ダタンラの滝またはランビアン山 → 空港
- おすすめの季節
- 12〜3月(乾季、晴れて涼しい)
- おすすめの日数
- 3〜4日
食べたいもの
- バインカン(炭火で焼く、うずらの卵のせ米粉焼き)
- バインミー・シウマイ(肉団子スープに浸して食べるパン)
- ミークアン(ダラット市場上階のターメリック麺)
- アラビカコーヒー(ランビアン山麓の農園)
実用的なヒント
- ダラットの線路は南北統一鉄道とつながっておらず、列車で直接来ることはできません。ハノイやホーチミンからの航空便か、ニャチャン(Nha Trang)からのバスで入ります。リエンクオン空港(Liên Khương)は滑走路補修のため2026年3月4日に閉鎖され、8月19日に再開。同日からハノイ・ホーチミン・ダナンとの路線も再び運航しています。
- 空港から市内までは約28km。1・2・3番バスがダラット市場・ダラットバスターミナル・スアンフーン湖まで約1時間、1人50,000ドン。タクシー・配車アプリは30〜40分で1台250,000〜350,000ドンです(参考料金)。
- 一年中春のような気候ですが、日が沈むと冷え込みます。海辺の街と組み合わせる旅程でも、長袖の羽織りものを別に用意しておきましょう。
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