ドイツ
ベルリン
壁の跡をたどって歩く街
過ぎた時間を隠さないベルリン
ベルリンで公園やクラブになっている空き地には、たいてい物語があります。28年以上にわたって東西を隔てた壁が崩れたあと、国境地帯として空けられていた土地や残された建物が、少しずつ公園やギャラリー、クラブへと姿を変えたからです。博物館島の古代の遺物、クロイツベルクのドネルケバブ店、旧空港の滑走路を走る自転車。そのすべてがひとつの街に並んでいます。分断の痕跡は展示室の中だけでなく、路面の敷石や公園、川沿いの壁にもそのまま残っているので、この街が歩んできた時間には、歩く道の上で出会うことになります。
壁が通っていた跡をたどる
1961年8月13日に築かれた壁は、1989年11月9日に崩れるまで、西ベルリンを全長156.4kmにわたって囲んでいました。都心には、壁が立っていた線に沿って二列の敷石が埋め込まれています。壁がほぼ全区間で、西側に面した壁と東側に面した壁の二重構造だったためです。足もとの二本の線をまたいだ瞬間、かつて越えられなかった境界を何気なく越えていることに気づきます。 ベルナウアー通りのベルリンの壁記念館(Gedenkstätte Berliner Mauer)には、長さ70mの当時の壁が国境地帯や監視塔とともに残っています。屋外展示は無料で、毎日午前8時から夜10時まで。 シュプレー川(Spree)沿いのイーストサイドギャラリー(East Side Gallery)は、途切れずに残る壁として最も長い区間です。壁の崩壊直後、21か国118人のアーティストが1,316mの壁に絵を描きました。端まで歩いて赤れんがのオーバーバウム橋(Oberbaumbrücke)を渡れば、そこはクロイツベルク(Kreuzberg)です。
記憶を街の真ん中に置く
1788〜1791年に建てられたブランデンブルク門(Brandenburger Tor)は、分断の時代には立入禁止区域の中にあり、東西どちらの人も近づけませんでした。いまは誰もがその下を歩いて通り抜けます。すぐ北には、ドームを載せた連邦議会議事堂(Reichstagsgebäude)があります。 南へ数分歩くと、虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑(Denkmal für die ermordeten Juden Europas)が現れます。高さの異なる約2,700基のコンクリートの石碑のあいだに入ると、いつの間にか街の音が遠のいていきます。2005年に開設された記念碑には24時間入ることができ、地下の情報センターも無料です。最もつらい歴史を、最も目につく場所に置く。それがこの街の選んだ答えです。
博物館島 ― 五つの博物館が集まる島
シュプレー川の中州に五つの博物館が集まる博物館島(Museumsinsel)は、1999年にユネスコ世界遺産に登録されました。一館だけ選ぶなら新博物館(Neues Museum)です。第二次世界大戦で大きく損壊して廃墟のまま残され、建築家デイヴィッド・チッパーフィールドによる修復を経て2009年に再開館しました。戦争の傷跡を埋めずに修復の中に取り込んでいるため、古い壁と新しい壁がひとつの空間で接しています。 ネフェルティティの胸像もここにあります。ドーム天井の下、緑と青で仕上げた部屋に胸像がひとつだけ置かれ、王妃の青い冠が部屋の色と重なって見えます。ペルガモンの大祭壇で知られるペルガモン博物館(Pergamonmuseum)は改修のため閉館中で、2027年6月4日に再開館の予定です。
街角で出会う味
カリーヴルストは、1940〜50年代ごろ、シャルロッテンブルク(Charlottenburg)の街角の屋台でヘルタ・ホイヴァー(Herta Heuwer)が初めて作ったといわれます。焼いたソーセージに、ピリッとしたカレー風味のトマトソースをかけた素朴な一皿です。 ドネルケバブもベルリンが元祖を自負する料理で、1972年にカディル・ヌルマン(Kadir Nurman)が串焼きの肉を初めてパンに挟んだと伝えられています。しっかり食べたいなら塩漬けの豚すね肉の料理アイスバイン(Eisbein)、デザートには、ほかの地域で「ベルリナー」と呼ばれるジャム入りドーナツ、プファンクーヘン(Pfannkuchen)を。 木曜の夜なら、クロイツベルクのマルクトハレ・ノイン(Markthalle Neun)へ。午後5時から10時までストリートフード・サーズデーが開かれ、市場の中がさまざまな国の料理の香りで満たされます。
滑走路の午後、湖畔の夏
2008年に閉鎖されたテンペルホーフ空港は、2010年、300ヘクタールの公園テンペルホーファー・フェルト(Tempelhofer Feld)として市民のもとに戻ってきました。飛行機が離着陸していたコンクリートの滑走路を、いまは自転車やスケートが走ります。開園時間は月ごとに変わり、6〜7月は夜10時30分まで。果ての見えない滑走路の真ん中に立つと、街の空がこんなに広かったのかと思えてきます。 夏、ベルリンの人たちは湖へ向かいます。南西部ヴァンゼー(Wannsee)の湖水浴場シュトラントバート・ヴァンゼー(Strandbad Wannsee)は1907年の開業。長さ1,275mの砂浜で屋根付きのビーチチェアを借りれば、一日のんびり過ごせます。
夜のベルリン ― テクノとテレビ塔
壁崩壊後の高揚した空気の中で、テクノはこの街のサウンドトラックになり、その頃に生まれた空きスペースがクラブ文化の舞台になりました。ベルリンのテクノ文化は、2024年にドイツの国内無形文化遺産目録に加えられています。 街を見下ろすなら、アレクサンダー広場(Alexanderplatz)のベルリンテレビ塔(Berliner Fernsehturm)へ。高さ368mの塔の、203mにある展望フロアまで、エレベーターなら40秒で上がれます。東ドイツ時代に建てられた塔が、いまでは街全体のシンボルになっている。そんなところもベルリンらしさです。
おすすめ4泊5日プラン
Day 1 ― ベルリン空港(BER)到着 → 空港エクスプレス(FEX)で中央駅まで約23分 → ブランデンブルク門・記念碑を散策 → 連邦議会議事堂のドーム Day 2 ― 博物館島(新博物館) → シュプレー川沿いを散策 → テレビ塔で夕暮れ Day 3 ― ベルリンの壁記念館 → マウアーパーク(Mauerpark、日曜は蚤の市と野外カラオケ) → イーストサイドギャラリー → クロイツベルクで夕食 Day 4 ― ポツダム(Potsdam)日帰り(中央駅からRE1・S7で約30分、ABC券) → サンスーシ宮殿(Schloss Sanssouci)、ジャガイモが供えられたフリードリヒ大王の墓 Day 5 ― テンペルホーファー・フェルトを朝の散歩 → 昼はカリーヴルスト → 空港
- おすすめの季節
- 5〜9月(屋外・湖)、11月下旬〜12月(クリスマスマーケット)
- おすすめの日数
- 3〜5日
食べたいもの
- カリーヴルスト(シャルロッテンブルク生まれ)
- ドネルケバブ(ベルリン発祥説)
- アイスバイン(塩漬けの豚すね肉)
- プファンクーヘン(ジャム入りドーナツ)
実用的なヒント
- 紙の乗車券は、乗る前に黄色か赤の刻印機で打刻して初めて有効になります。市内のAB券は4ユーロ(120分・片道)、ベルリン空港(BER)との行き来にはABC券(5ユーロ)が必要です。
- 日曜・祝日はほとんどの店が閉まります。開いているのは大きな駅構内の一部のスーパーくらいなので、買い物は土曜日のうちに。
- 連邦議会議事堂のドームは無料ですが、事前登録をしないと上れません。入口で本人確認があるので、パスポートを持参してください。
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