中国
北京
朱色の宮殿と灰色の路地の街
故宮から胡同、万里の長城まで
北京の地図を広げると、街の真ん中を南北に貫く一本の線が見えてきます。北の鼓楼・鐘楼から南の永定門まで続く中軸線です。その線上に皇帝が暮らした故宮があり、線から数歩外れると、灰色のれんが塀が続く胡同(フートン)の路地が始まります。朝は祭壇脇の林を歩き、昼は600年を超える宮殿の広場を横切り、夕方は湖畔の路地で北京ダックを味わう一日。このガイドでは、そんな一日を三、四日につなげていく方法をまとめました。
中軸線 — 街を貫く一本の線
北京の旧市街は、一本の軸を基準に左右が組み立てられています。鼓楼・鐘楼から景山公園、故宮、天安門を経て永定門まで7.8kmを結ぶこの軸は、2024年7月に「北京中軸線」としてユネスコ世界遺産に登録されました。 この線を意識して歩くと、ばらばらに見えていた名所が一本の路線の駅のようにつながります。皇帝の祭壇だった天壇公園は軸の南側の東寄りに、皇宮の裏庭だった景山は故宮のすぐ北にあります。北端近くの鼓楼に上って南を望めば、景山とその先へ延びる軸の眺めがひと目で見渡せます。
故宮と景山 — 南から北へ
故宮は1420年、明の永楽帝の時代に完成し、明・清二つの王朝の皇帝24人が暮らした宮殿です。現在は故宮博物院として公開され、見学は南から北への一方通行。全員が南の午門から入り、北の神武門か東の東華門から出ます。入場料は4〜10月が60元、11〜3月が40元で、珍宝館と鐘表館はそれぞれ別に10元かかります。 午門をくぐり太和殿前の石畳の広場に立つと、黄色い瓦屋根が幾重にも連なります。奥へ進むほど広場は狭く、建物同士の間隔も近くなり、政務の場から皇族の暮らしの場へ移る変化を足取りで感じられます。 神武門を出ると、道の向かいがすぐ景山公園。入場料2元を払って丘に登れば、さっき歩いてきた宮殿の屋根が足元に広がり、日が傾くにつれて瓦が金色に染まっていきます。
天壇の朝、頤和園の午後
天壇は故宮と同じ1420年に建てられ、明・清の皇帝が天を祀り、豊作を祈った場所です。白い大理石の基壇に三重の屋根をのせた円形の殿堂、祈年殿が有名ですが、公園がいちばんにぎわうのは開門直後の朝6時ごろ。古いコノテガシワの林のあいだで太極拳をしたり、羽根蹴りをしたり、声を合わせて歌ったりする近所の人たちが、真っ先に公園を埋めていきます。祈年殿・回音壁・圜丘壇などの有料エリアは8時に開くので、その前に園内をひと回りしておくといいでしょう。 午後は市街の北西にある頤和園へ。1750年に造られた皇室庭園で、19世紀末に再建された際に今の名がつきました。広い昆明湖を横に見ながら万寿山の方へ歩いてみてください。園内でいちばん見どころが集まるエリアです。
万里の長城 — 八達嶺か慕田峪か
一日かけて長城へ行くなら、よく選ばれるのが八達嶺長城と慕田峪長城です。 八達嶺は市内から北西へ約60km、延慶区にあります。明代には皇帝陵と都を守る要衝で、市内から近いぶん混み合いがちです。 慕田峪は北の懐柔区にある明代の区間で、望楼が密に並ぶ尾根を歩きます。上りは密閉型のロープウェイ、下りはそり式のスライダーも選べます。チケットは実名予約制で、30日前から購入できます。公共交通なら、東直門の交通ハブから急行バス916路に乗って懐柔北大街で降り、H23・H3・H71路に乗り換えると慕田峪の入口に着きます。 望楼の中の階段を上って細い窓から外をのぞくと、城壁が稜線に沿って上り下りしながら、視界の果てまで続いていきます。
胡同と湖 — 鼓楼から後海へ
胡同は北京の古い町並みに残る細い路地。灰色のれんが塀に四合院の門が並び、門前には自転車がとめられ、シャンチー(中国将棋)の盤を囲むお年寄りたちが昼下がりを過ごしています。 歩き始めにいいのは、中軸線北端の鼓楼と鐘楼。鐘楼をぐるりと囲む鐘楼湾胡同には、赤い壁とハトの群れが織りなす昔の北京の風景が残っています。ここから煙袋斜街を抜けると、什刹海(シーチャーハイ)を成す湖の一つ、後海(ホウハイ)に出て、万寧橋を過ぎれば南鑼鼓巷(ナンルオグーシャン)の店が並ぶ路地まで歩いてつながります。 後海の水辺は、昼は柳の木陰を散歩する人が行き交い、日が暮れるとバーに次々と明かりがともって、ライブ演奏が湖面に流れていきます。
北京の食卓 — 北京ダックから炸醤麺まで
北京ダックはこの街を代表する料理です。1864年創業の全聚徳は、アヒルを窯に吊るして焼く宮廷式の技法を160年以上受け継いできました。皮がぱりっと焼けたダックをテーブル脇で薄くそぎ切りにしてもらい、薄餅にダックと細切りのねぎ、きゅうりをのせ、甜麺醤を塗って包んでいただきます。 炸醤麺(ジャージャー麺)は、韓国のチャジャンミョンのルーツとしてよく紹介される麺料理。油で炒めた味噌は濃く塩気があり、きゅうりの細切りやもやしなどの具が別皿で出てくるので、自分でのせて混ぜて食べます。同じ名前から思い浮かべる甘い味とはかなり違います。 寒くなると、炭火をおこした銅鍋で薄切りの羊肉をくぐらせ、ごまだれにつけて食べる涮羊肉(シュワンヤンロウ)がぴったり。冬の路地では、赤いサンザシの実に飴をからめて串に刺した糖葫芦(タンフールー)をよく見かけます。
おすすめ3泊4日プラン
Day 1 — 午門から故宮へ入場 → 神武門 → 夕暮れの景山公園 → 王府井(ワンフージン)で北京ダックの夕食 Day 2 — 朝6時の天壇公園 → 前門の通りで昼食 → 午後は頤和園 Day 3 — 慕田峪長城(早朝出発)→ 市内へ戻る → 涮羊肉の夕食 Day 4 — 鼓楼・鐘楼 → 鐘楼湾胡同 → 煙袋斜街 → 後海を散策 → 南鑼鼓巷 → 空港
- おすすめの季節
- 4〜5月(暖かい春)、9〜10月(澄んだ秋)
- おすすめの日数
- 3〜5日
食べたいもの
- 北京ダック(全聚徳などの老舗)
- 炸醤麺(具を自分で混ぜる麺)
- 涮羊肉(銅鍋の羊しゃぶしゃぶ)
- 糖葫芦(サンザシの飴がけ串)
実用的なヒント
- 故宮は当日券の販売がありません。見学日の7日前20時(現地時間)から公式サイトやWeChatミニプログラムでパスポートによる実名予約ができ、入場時は同じパスポートを提示します。
- 故宮は月曜休館(祝日を除く)。天壇公園も祈年殿などの有料エリアは火〜日曜のみの開放です。月曜は長城や胡同歩きに充てましょう。
- 地下鉄は海外発行のVisa・Mastercardのタッチ決済カードを改札にかざすだけで乗れます。空港線2路線を含む全27路線で使えますが、ブランドロゴが2つ付いたデュアルブランドカードや二重通貨カードはまだ対応していないため、Alipayの乗車コードを予備に用意しておくと安心です。
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